「国産万年筆がどうしようもなくダサいので早く中国に買収されてほしい」
少し前にこんなタイトルの投稿が話題になっていました。
匿名の投稿者の主張としてはパイロット、セーラー、プラチナ3社のフラグシップモデルが黒軸でモンブランのパクリ、天冠にマークを載せてるのもモンブランのパクリ。国産万年筆はニブ(ペン先)は素晴らしいけどデザインなんとかしろ。いっそのこと中華系企業に買収されてしまえとのこと。

当ブログの万年筆記事をいつも読んでくださっている方はご存知の通り、私はこの方がパクリと称する黒軸を多数愛用しています。
パイロットのカスタムシリーズは10本近く所有していてとても気に入っています。
そしてつい先日もジャスタス95を購入したばかり。
そんな嫌われた黒軸愛用者の私ですが、投稿者に対しての反論の意味合いを込めたコメントで、この記事を読めと私のブログ記事のリンクが紹介されていたおかげでそこから当ブログへのアクセスが多数ありました。
やった!!
記事を投稿してくれたおかげでブログがたくさん読まれたよ、ありがとう!
・・・とはならないよ!!
日本人たるもの国産万年筆を一番に愛用すべし! なんてことは全く思わないのですが、表現がキツすぎてメーカーに対する敬意が感じられないのですよね。
ちなみにその記事を読んでみたい方はコチラ。
記事自体に思うところはたくさんありますが、それだけでなくあまり万年筆を知らない方からは称賛されたコメントばかりで国産万年筆がダメという印象が広まっているであろう様子にも残念な気持ちです。
愛が伝わってくるというコメントも多かったですが、死にたくなるくらい嫌なら使わないでどうぞと言いたくなりますし、表現酷くて愛してるようには聞こえません。
ただ、表現がオーバーすぎるのと、ツッコミどころ満載なところを除けば気持ちがわかるところもあるのです。
デザイン面で言えばカスタムシリーズ(黒軸)のうち、いわゆるベスト型であるカスタムヘリテイジやカスタム845,URUSHIなら結構好きですが、バランス型の74系は好きかと問われると・・・。
とはいえ74系は金ペンとしては海外のものと比べて遥かに安価なのですよね。
海外メーカーはどちらかと言うと書くことよりもアクセサリーや宝飾品、ステータスとしての価値のほうが大きいメーカーが多い印象で、書き味にこだわったニブがあってもヴィスコンティやピナイダーみたいに値段が高いラインナップじゃないと使われてなかったり。
その点パイロットは出し惜しみしてない。
1~2万円の万年筆にパイロットが扱うほとんどのペン先がラインナップされています。それだけの値段で他所で味わえない素晴らしいペン先たちを楽しめるって素晴らしい。
定価2万円のカスタム742でフォルカンやウェーバリーなどほとんどの特殊ペン先が揃っていますし、それ以外に特殊なエラボーやジャスタスなんかでも定価3万円以内。
ペン先の良さは投稿した方も認めてらっしゃるところですし、フラグシップモデルってコロコロ変えるものでもないと思うのですよね。
仮に中国に身売りしたとして今の優秀なペン先たちの品質がちゃんと維持されるのかも疑問です。
デザインは大事ですが、国産の他にはない優れたところを失ってしまったらもう終わりです。
デザイン以外が全く同じなら、そりゃデザインが好きな方を選びます。
しかし、私はデザインよりも他にはない安心さや様々なペン先の楽しさに惹かれて国産万年筆を選んでいます。
確かな書き味やそれでないと出会えない筆記体験。
それに惹かれる方もきっと多いかと。
それに少しずつですが国産万年筆のデザインも変わってきていますよね。
日本文具大賞でグランプリに輝いたプラチナのプロシオンはスタイリッシュでカッコよく、シンプルで飽きがこないデザインです。
パイロットのコクーンもそんな感じ。
新商品が鉄ペン中心なので、安価な鉄ペンで若手を万年筆の魅力に引き込み、万年筆ユーザーを増やしたらあとは金ペンを買わせる作戦なのでしょうかね。
今年に入ってから金ペンのカスタム74もカラー展開を増やしてきているのは良いニュース。デザインに対する意識が強まっていることは間違いありません。
スケルトン軸は安易ですが売れそうです。ペン先が細字、中字だけなのでもう少し頑張って欲しいですが。
やたらと比較対象として記事に登場してきたモンブランもステータスとしての意味合いは大きいのかもしれませんが、ホワイトスターも別にカッコよくはない・・・。
セーラーの天冠にロゴ入れてるのはモンブランのパクリって他にも使ってるところたくさんあるんですが・・・
国産がモンブランだけをパクってるからダメで、中国は全世界を相手にパクってるから良いとかもはや意味がわかりません。
ただ単に黒軸が嫌いってだけでは・・・。
とはいえデザインも大事ですよねぇ。デザインが目に留まらなければ手に取りもしない層も多そうです。
人は見た目が9割。万年筆も見た目が9割(?)
投稿者の主張の通り選択肢が増えてくれるなら大歓迎です。
しかし新カラーが発売されてもペン先のラインナップを絞るということは、ペン先を揃えたとしてもコストに見合わないということなんでしょうかね。
良いデザインでも使いたいペン先がないと買う気になりにくい私にはペン先とデザインの組み合わせが増えないとあまり意味がない。
選択肢が増えるのは嬉しいですが、それによって値段が上がってしまうのも困りもの。ペン先がたくさんある分、同じ軸でも何本も揃えたくなってしまうのが国産万年筆の嬉しいところであり、お金的には大変なところ。
パイロットのカスタム74も今年値上げしましたが、国産万年筆の価格は安すぎるとも言われているので、全般的に価格を維持してくださっていることには頭が下がります。
黒軸もよく言えば落ち着いていて仕事でも使いやすい見た目です。年齢を重ねてもずっと使えることでしょう。
私が好きな国産万年筆メーカーにはこれからも新しい筆記体験を生んでくれることを期待しています。
パイロットのカスタムURUSHIでは極上のふわふわ感を味合わせてもらい、セーラーのクロスコンコルドでは1本でまるで違う字幅をハネ、ハライも表現できる高い完成度の感動を楽しませてもらいました。
そうした感動にまた出会いたい。
いろいろ書いてきましたが万年筆が興味ない人もたくさん惹きつけた文章力はすごいですね。
私も人を惹きつける文章力がほしい。